耐久性試験方法に関する研修会

大阪広域生コンクリート協同組合(以下、大阪広域協組)は、教育研修の一環として、㈱淺沼組の協力を得て、平成23年11~12月にかけて、5回に亘り耐久性試験方法に関する研修会を開催した。参加者は総勢41名で大変有意義な研修会となった。

大阪広域協組は、平成21年度から日本建築学会近畿支部材料施工部会の呼びかけに応じて「暑中コンクリート対策検討委員会」を結成し、暑中コンクリートに関する実験に取り組んでいる。

平成21年度はフレッシュおよび硬化コンクリートの性状について、室内試験室でコンクリート温度をおよそ20℃、33℃および38℃の3水準について実験を行い、実機実験では当時加盟の105工場が製造した3ないし4配合のコンクリートを、アジテータ車で(財)日本建築総合試験所(以下、日総試)まで運搬し各種試験を行った。

また、平成22年度は前年度の実験で検討課題となった、構造体強度補正値(S値)を確認するため模擬柱試験体を含めた実機実験を実施した。

さらに、平成23年度は、発注者側(土木)からの要望により硬化コンクリートの耐久性に関する実験を行った。フレッシュおよび硬化後の各試験を表-1に示す。試験No.1~3は、日総試で供試体作製および4週間の前養生まで行い、その後の耐久性試験は㈱淺沼組 技術研究所で実施した。

表-1 各試験

1 コンクリートの促進中性化試験
2 ポロシティー(細孔量)
3 コンクリートの凍結融解試験
4 透気性試験
5 コンクリートの静弾性係数試験
6 コンクリートの圧縮強度試験
7 コンクリートの長さ変化試験
8 コンクリートスランプ試験
9 フレッシュコンクリートの空気量試験
10 フレッシュコンクリートの温度測定方法

中性化試験の風景


生コンクリートの製造側としては、半製品である生コンを製造するために工程および製品管理を行い、フレッシュ性状を安定させ硬化後の強度を保証しているが、耐久性については仕様書や発注者側の判断による場合がほとんどである。しかし、コンクリートの乾燥収縮率など耐久性も重要視されるようになり、耐久性試験の試験方法や規格値などは知ってはいるものの、実際に試験することなど皆無である。

今回の耐久性試験のうち、促進中性化、ポロシティーおよび凍結融解試験を㈱淺沼組技術研究所で引き受けて頂き、さらに加盟工場が試験に参加できるようにご配慮して頂いた。

先ず、促進中性化試験は、100×100×400mmの曲げ供試体を二酸化炭素濃度5%の環境条件となるように保管する。試験は供試体を長さ方向に対し直角となるように強度試験機を用いて割裂し、割裂した面にフェノールフタレイン1%エタノール溶液を噴霧し、中性化していない部分が赤紫色に着色し、中性化している部分は着色しないことにより判定する。測定は片側面を5か所、両側面で合計10か所を測定し、平均した結果が試験値となる。

凍結融解試験も曲げ供試体を作製し、供試体中心部の温度が、5℃~-18℃範囲内になるように調整し保管しなければならないため、試験槽内は-25℃でも凍結しない不凍液(ラジエーター液よりも高性能)が必要となる。供試体の保存は、供試体より少し大きめのゴム製容器に供試体と水を入れ、試験槽内で循環する不凍液の中にそのまま浸ける。凍結融解は、供試体中心部の温度を5℃~-18℃に下げ、-18℃~5℃に上げると1サイクルとなる。1サイクルに要する時間は3時間以上~4時間以内である。凍結融解を繰り返すと、抵抗性の低いコンクリートでは、表層のスケーリング、ポップアウトにより断面が減少し、供試体がやせ細っていく。また、供試体内部のマイクロクラックの発生により供試体の相対動弾性係数が低下していく。相対動弾性係数は、凍結融解30サイクル毎に一次共鳴振動数を測定し、0サイクルの時点での数値と比較して求められる。

水銀圧入法による細孔径分布は、耐久性評価のための指標となる。細孔量はコンクリートからモルタル部分を切り出して3~5mm角の立方体に成形し、その試験片を真空状態にして水銀を圧入することにより測定する。1試料の測定には約2時間程度を要するため、今回は試験に用いる機器や方法について説明を受けた。試験に使用する水銀の密度が13g/cm3以上あり、密度が大きいことは知っていたが、200mℓ程度の容器に入った水銀を手に取ってみるとその重さが印象に残った。

まさしく”百聞は一見にしかず”で、今回の研修会に参加した方々は、非常に有意義な研修会であり、今回学んだ試験方法は忘れることなく、どこかで役立つことがあるだろうと感じた。また、生コン製造工場としては、日常の品質管理は基より、調(配)合に見合う高耐久なコンクリートを造り上げていくことも必要であると感じた。

最後に、今回の研修会に多大なご協力頂いた、㈱淺沼組並びに㈱淺沼組技術グループ課長 山﨑様に深く感謝の意を表します。

(技術部)

© The ready- mixed concrete cooperative of Greater Osaka.
PAGE
TOP